かつて養蚕・絹織物産業で発展したことから「桑都(そうと)」と称されていた八王子。現在は製造業が盛んな「ものづくりの町」である一方で、人気の観光スポット・高尾山や、ハイキングが楽しめる陣馬山、市内中心部を流れる浅川といった豊かな自然に恵まれたエリアでもある。そんな八王子の町全体を、アウトドアを通じて盛り上げていこうと立ち上がったのが、八王子市商工会議所の有志を中心に設立された「サイバーシルクロード」。本サイトの運営も行う同団体がアウトドア事業をスタートした経緯や具体的な事業内容、3月25日に市内で開かれる「はちおうでぃフェス」を踏まえた今後の展望など、同事業の担当委員でもある第一合成・河野良子代表取締役に話を聞いた。
— サイバーシルクロードはどういった団体なのでしょうか
サイバーシルクロードは八王子市商工会議所から枝分かれしてできた有志の団体で、経営者向けの勉強会、新規事業者への支援、農協と連携した農作物のブランド化などさまざまな活動を行っていますが、農工商の連携や人材の確保など、八王子の事業者が抱えている課題はたくさんあります。
昨年で設立20周年を迎えたことを契機に、八王子全体を盛り上げる新たな事業を創造するために立ち上げたのが、八王子の魅力を活かしたアウトドア事業です。
— なぜ「アウトドア」に注目したのでしょうか
コロナ禍で街の経済が落ち込み、八王子の活気のなさを心配する声がありました。なんとか町に人を呼び込むにはどうしたらいいのか。ものづくりなど一部の業種にだけ光が当たることは避け、市の事業者全体が喜ぶような新規事業をやるという方向で話が進みました。
アウトドアはさまざまな業種に恩恵があると考えています。外から人が来ることで飲食店や交通関係が潤い、アウトドア製品の開発をするものづくり企業を支えることで、八王子発のアウトドア製品・ブランドを増やしていけるはずです。
コロナ禍の当初、県を跨ぐ移動を自粛する動きがあったこともあり、近場で良いキャンプ場や遊び場がないか、特に子供がいる方を中心にそういった話題がよく出ていました。でも、そこで八王子が選択肢に挙がらないのは寂しいですよね。高尾山をはじめ自然はたくさんありますが、どうしても登山のイメージが強いので…。
— 八王子でアウトドアというと、高尾山のイメージが強いですよね。
高尾山以外にも豊かな自然があることを多くの人に知ってもらいたいです。まずは東京 23区の人がターゲット。日帰りで気軽なアウトドアを楽しめる場所・環境を整え、キャンプによく行くような上級者はもちろん、ビギナーにも有益な情報を発信するために立ち上げたのがポータルサイト「はちおうでぃ」です。
— 企業への支援はどのようなことをされているのでしょうか
アウトドア事業への新規参入を希望する事業者を募って、支援を行う取り組みも行っています(現在は応募締切済)。審査に通った5〜6社が実際に商品開発を進めています。
事業者には、デザイナーや商品開発の専門家を派遣するほか、補助金を用意しています。今回はスタートアップ企業はおらず、自社の事業の横展開を考えている企業が中心です。
— 具体的にどんなアイデアがあるのでしょうか
例えばアウトドア向けの車のカスタムを行う事業や、水上に浮かべるテント、キャンプの野菜不足を補うためのドライフードなど、進んでいるプロジェクトは多種多様です。3月のイベントでも、数社出展があると思います。
皆さんは色々な想いを持って参加してくれています。アウトドア事業に興味はあるがノウハウがなく、参入したくてもできないジレンマを抱えていた事業者もいました。ぜひ、サイバーを通して突破口を開いていただければ。
— 事業者間の交流もあるでしょうし、良い循環が生まれそうですね。
以前、新潟の燕三条に視察に行ったのですが、各社がそれぞれの技術・強みを出し合って製品を開発している姿が本当に素晴らしかった。業種関係なくみんなで作り上げるという意識が強いので、例えばイタリアンのお店が新しく出店するとなったら、食器、フォーク、ナイフ、全て燕三条で作った鉄製のものが使われていたりする。食事も美味しかったですが、その意気込みに感銘を受けました。
このモデルをそのまま真似することは難しいですが、一つの理想系だと思います。八王子でもそういった環境を作るため、今後もさまざまな施策を考えていかないといけません。
河野良子(こうの・りょうこ)
第一合成株式会社代表取締役。サイバーシルクロードではアウトドア事業の委員を担当、一般社団法人首都圏産業活性化協会では理事を務める。自然と融合できるような旅行や登山が好きだという。
はちおうでぃ編集部には、キャンプや釣りなどのアウトドアが好きなメンバーが集まり、八王子を拠点に日々面白い情報をリサーチしています。情報提供お待ちしています!(ライターも募集中)